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2025年度:共通テスト国語講評
2025.01.18

共通テストの国語に関して、2025年度の試験では何点か変化が見られました。その中でも特に注目すべき点は、新設された第3問が言語活動に特化した内容であった点です。また、大問数および設問数は昨年度より増加したものの、解答数(マーク数)は変更がありませんでした。これにより、全体の難易度はおおむね昨年と同程度であると考えられます。以下、具体的な出題傾向や問題形式について詳しく説明します。


出題形式と構成の概要

2025年度の共通テスト国語は、以下のように構成されていました:

  • 近代以降の文章: 第1問から第3問までの3大問。
    • 第1問と第2問は、単一のテキストからの出題。
    • 第3問は、複数資料を用いた言語活動を重視した新設の問題。
  • 古典の文章: 第4問(古文)と第5問(漢文)の2大問。
    • いずれも複数のテキストを組み合わせた形式。

大問数が昨年より1つ増え、設問数も増加しましたが、解答数に変化はありませんでした。これにより、受験生の試験全体への取り組みやすさは昨年と大きく変わらなかったと見られます。


各大問の特徴と難易度分析

第1問(評論文)

第1問では、観光における視点のあり方をテーマにした文章が出題されました。この文章は「する観光」と「見る観光」といった二項対立を超えて、両者の相互作用や反転の可能性を考察する内容でした。このような抽象度の高いテーマ設定は、受験生に高度な内容理解を求めたと言えます。ただし、設問数は昨年の6問から5問に減少し、選択肢の数も5つから4つに減少したため、解答しやすくなった部分もありました。

第2問(小説)

第2問の出典は蜂飼耳の「繭の遊戯」で、比喩表現が多く含まれた文章でした。設問の選択肢がすべて4つになったことで、一見すると解答の負担は軽減されたように思われます。しかし、心情や表現の効果を問う設問では、傍線部周辺の説明が少なく、正解を導き出すのが容易ではない場面もありました。総じて、昨年と比較して難易度は大きく変わらないと考えられます。

第3問(新設問題:実用的文章)

今年新たに導入された第3問は、外来語の使用をテーマに、わかりやすい言葉遣いについて考察する問題でした。この大問は、Uさんが作成した文章(約660字)、資料Ⅰ(横棒グラフ)、資料Ⅱ(400字の説明文)、および資料Ⅲ(折れ線グラフとメモ)を基に構成されていました。設問は資料の内容をもとにした読み取り問題や、文章の修正方針について考えさせる問題などが出題され、全体的に情報整理のしやすさが特徴でした。これにより、新傾向でありながら受験生にとって比較的取り組みやすい問題であったと考えられます。

第4問(古文)

第4問では、平安時代の物語『源氏物語』と鎌倉時代の擬古物語『在明の別』が取り上げられました。内容は、高貴な男性とその妻、そしてかつての恋人との三角関係を描いたものです。設問数および解答数は昨年より減少し、選択肢も4つに統一されたため、受験生の負担は軽減されたと言えるでしょう。一方、敬語の種類や敬意の方向を問う設問は基礎的な知識があれば解けるものでした。

第5問(漢文)

漢文では、『論語』およびその注釈書、さらに江戸時代の漢学者の評論が題材となりました。近年頻出の複数漢文の組み合わせ問題が引き続き出題され、設問内容も返り点や語義など、例年通りの形式が中心でした。ただし、選択肢がすべて4つになり、紛らわしい選択肢が少なくなったことで、受験生にとって解きやすい印象を与えたと考えられます。


分量と受験生の負担

  • 現代文: 第1問は本文が約3800字と昨年より短くなり、全体の分量が削減されました。第2問は約4300字で、昨年と比較して約900字の増加が見られました。第3問は、複数の資料を含む構成でありながら、各資料の内容が簡潔にまとめられていたため、情報整理が容易だったと言えます。
  • 古文: 合計字数が昨年より減少し、読みやすさが向上しました。
  • 漢文: 合計199字と昨年よりわずかに増えましたが、設問が基礎的な知識で解けるものが中心だったため、負担は大きく変わりませんでした。

全体の難易度と出題傾向のまとめ

2025年度の共通テスト国語は、全体として昨年と同程度の難易度でした。第1問の評論文や第2問の小説は、一部抽象的なテーマや表現が含まれていたものの、選択肢の減少などにより解答しやすさが向上しました。また、第3問の新設問題は新傾向ながらも、設問内容が整理されており、受験生にとって取り組みやすかったと考えられます。古文・漢文についても、設問数や選択肢の削減が受験生の負担軽減に寄与しました。

今年度の出題は、従来のセンター試験の形式を踏襲しつつも、新しい問題傾向への適応が進んでいることがうかがえます。このような変化は、これからの共通テストの方向性を示していると言えるでしょう。