2024年度の「学校法人基礎調査」に基づく私立大学・短期大学等の入学志願動向が発表されました。日本私立学校振興・共済事業団が実施したこの調査では、大学598校、短期大学272校、大学院487校からのデータを集計し、入学定員充足率や志願倍率を地域別、規模別、学部系統別に分類してまとめています。調査基準日は2024年5月1日で、今回はこれらのデータから見えてくる私立大学の現状とその背景について詳しく見ていきます。
調査結果によれば、大学の入学志願者数、受験者数、合格者数、入学者数は前年から減少していますが、入学定員は増加しています。具体的には、入学者数が前年に比べて5,869人減少し、49万4,730人となっています。一方で、入学定員充足率は98.19%と、前年から1.40ポイントの下降を見せました。これは、大学全体で定員が充足されない状況が続いていることを示しています。
定員割れ(入学定員充足率100%未満)の大学は前年よりも34校増えて、合計354校となりました。大学全体における未充足校の割合は59.2%に達し、過去最高を更新しました。この背景には、少子化や高等教育の多様化が影響していると考えられます。
規模別で見ると、入学定員充足率が上昇したのは「100人未満」「1,000人以上1,500人未満」「3,000人以上」の区分のみです。特に小規模校では定員割れが拡大しており、「100人以上200人未満」などの区分で入学定員充足率は83.37%と低迷しています。これに対して、大規模校は充足率が100%を超えており、中規模から大規模にかけての大学では入学者数の確保が比較的順調であることが伺えます。
地域別に見てみると、入学定員充足率が上昇しているのは関東(埼玉、千葉、東京、神奈川を除く)、東海(愛知を除く)、大阪、兵庫、福岡の各地域です。特に関東の非主要地域や福岡では充足率が100%を超えており、地域差が顕著です。一方で、三大都市圏(東京、名古屋、大阪)内では充足率がやや低下しており、特に東京では前年から1.26ポイント減少しています。
学部系統別に見ると、すべての学部系統で入学定員充足率は下降しましたが、「医学」「農学系」「社会科学系」「芸術系」では充足率が100%を超えています。特に医学部の志願倍率は26.81倍で、定員充足率も100.42%と非常に高い水準を維持しています。このことからも、医学部の受験の厳しさが改めて浮き彫りになっています。
短期大学に関しては、入学定員充足率が前年と同様の90%台であり、定員割れの短大数は前年から5校減少し249校となりました。しかし、全体としては改善が見られない状態が続いています。短期大学の入学者数は減少傾向にあり、引き続き厳しい状況が続いています。
中小規模校における一般選抜のチャンスは今後さらに広がる可能性があります。特に、大規模校の合格者数が増加している一方で、中小規模校の選抜倍率が低下する傾向にあるため、受験生はこれらの学校に対しても目を向ける価値があるでしょう。指定校制や総合型選抜の選考で漏れた受験生にとっては、一般選抜の倍率が比較的低い中小規模校が選択肢となるかもしれません。
2024年度の調査結果は、私立大学の入学志願動向に関する多くの示唆を提供しています。特に小規模校の定員割れや地域別、学部系統別の充足率の違いは、私立大学が直面する現実を反映しています。今後も大学選びにおいては、地域や規模、学部系統による違いをよく理解し、自分に合った選択をすることが重要です。また、中小規模校の一般選抜における機会も見逃せないポイントとなるでしょう。