大学入試の「替え玉受験」で塾講師の男が逮捕
2026年5月、教え子の代わりに外部試験を受験し、その成績を利用して大学入試に出願したとして、元大手個別指導塾の講師の男(35歳)が電磁的記録不正作出・同供用と偽計業務妨害の疑いで大阪府警に逮捕されました。
事件の概要は、男が昨年9月に10代の男子受験生のふりをして実用英語技能検定(英検)2級を受験し、そのスコアを昨年11月の大学入試の出願に不正利用したというものです。
合成写真を使った巧妙な出願
警察の調べによると、男は勤務先であった塾のパソコンを使い、自分と受験生の顔の特徴を組み合わせた「合成写真」を制作していました。この加工写真を大学の入学願書に貼り付けることで、英検の受験時と大学入試の出願時で写真の整合性を持たせ、本人確認の手をすり抜けようとしたとみられています。
発覚のきっかけは「学生証」
この不正により受験生は一度「合格」となりましたが、春に入学した後に事態が急展開します。大学から交付された「学生証」に印刷されていた顔写真が、出願時に提出された合成写真のままだったため、それを見た受験生の家族が「本人の顔ではない」と不審に思い、大学側へ相談したことで事件が発覚しました。
事態を把握した大学側は警察に申告し、今年4月にこの受験生の合格を取り消す措置をとっています。男は警察の調べに対し、容疑を認める供述をしているということです。
狙われた「外部試験利用制度」と近畿大学の対応
今回の不正で利用されたのは、多くの大学が導入している「英語外部試験利用制度」でした。これは、英検などの民間試験で一定のスコアを取得している場合、大学固有の英語の試験を満点換算にしたり、得点を加算したりできる仕組みです。
近畿大学の推薦入試が舞台に
事件の舞台となったのは、近畿大学の公募推薦入試でした。同大学の入試では、外部試験のスコアと当日の入試結果のいずれか高い方の点数を採用できる制度を設けています。
大学側は今回の件を受け、「多くの受験生が日々努力を重ねて臨んでいる入試において、信頼性を著しく損なう行為は断じて許されるものではなく、極めて遺憾。引き続き不正行為に対して厳格に対応する」とコメントを出しています。また、外部試験を運営する日本英語検定協会側も、不正防止対策の徹底や公平な試験環境の維持に努める意向を示しています。
過去の「替え玉受験」に関する主な事例
大学入試やそれに準ずる試験における「替え玉受験」などの不正行為は、過去にも発生し、その都度大きな社会問題となってきました。厳格化が進む中で起きた、主な過去の事例を振り返ります。
1991年:明治大学での大規模な替え玉受験事件
日本の大学入試史上、最も広く知られている不正の一つが、1991年に発覚した明治大学法学部の替え玉受験事件です。この事件では、受験生の親や仲介者が関与し、現役の大学生などが報酬を得て受験生に成り済まして試験を受け、複数の合格者を出していました。後に大規模な組織的関与が明らかになり、関係者が逮捕される事態へと発展しました。
2022年:大学入学共通テストにおける受験生による不正
記憶に新しいところでは、2022年1月の大学入学共通テストにおいて、試験中にスマートフォンを使用して問題用紙を撮影し、外部の現役大学生らに解かせて解答を受け取っていた受験生が逮捕された事件があります。この事件は、インターネットやSNSツールを悪用した新しい形の試験妨害として、全国の試験会場におけるスマートフォンの取り扱い規則が強化されるきっかけとなりました。
まとめ
今回の事件は、受験生の学力を伸ばす立場にある塾講師が、デジタル技術を悪用して外部試験の盲点を突くという、異例の形での摘発となりました。
大学入試は、すべての受験生にとって公平・公正であることが前提の制度です。いかなる事情があろうとも不正は受け入れられません。